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文字数1534
掲載日2012年01月04日 0 1
媒体本紙(朝刊)

加速 北の拠点 復興と自動車産業集積(1)/被災地再生、けん引役に
生産体制強化し支援

 自動車産業の「北の拠点」が東日本大震災を経て、スケールを増す。トヨタ自動車は関東自動車工業岩手工場(岩手県金ケ崎町)、セントラル自動車(宮城県大衡村)、トヨタ自動車東北(同県大和町)の3拠点を軸に、東北での生産体制強化を打ち出した。セントラルの新本社はことし操業2年目を迎え、新たに東日本の生産網の中枢機能を備える。震災の影響をはね返し、設備投資に踏み切る地元企業もある。自動車産業が復興をけん引する役割も担おうとしている。(自動車産業取材班)=6回続き

 24年ぶりの東京開催となった昨年の東京モーターショー。一般公開を3日後に控えた11月30日、記者発表会が開かれた。
 世界が注目する会場で、トヨタの豊田章男社長は震災からの復興に懸ける思いを訴えた。
 「地域と力を合わせて復興の原動力になりたい。トヨタは東北からも、洪水があったタイからも決して退かない。ものづくりを通じ地域の未来を創造する」

<今後の主力託す>
 豊田社長は昨年7月、仙台市を訪れ、トヨタ東北のエンジン工場新設や関自工岩手での最新の小型ハイブリッド車(HV)「アクア」生産など、具体的な東北支援策を発表した。
 その数日前には関自工、トヨタ東北、セントラルをことし7月に統合する方針も公表。関自工が静岡県にも主力工場を持つことから社名を「トヨタ自動車東日本」とし、本社をセントラルに置くことを決めた。
 トヨタは東北を中部地方、北部九州に続く「国内第3の生産拠点」と位置付ける。拠点の中心はセントラルの約4倍の生産能力を持つ関自工の本社がある神奈川県ではなく、宮城県大衡村に据えた。震災を機に、東北拠点化へのアクセルを踏み込んだ。
 アクアは年20万台超を見込む今後の主力車種だ。生産は全て関自工岩手に託された。トヨタ首脳は大ヒットしたHVを引き合いに「プリウス超えもあり得る」と期待する。
 思惑通りに売れれば地域の取引企業を潤し、東北経済に勢いをもたらす可能性がある。
 関自工の服部哲夫社長は「新型車発売は小さなことかもしれない。それでも復興への小さな光、小さな明かりであってほしい」と話す。
 トヨタ東北のエンジン工場は12月末、建設に着手した。ことし5月末には建屋が完成する予定で、年内にも稼働し、アクア向けに供給を始める。
 エンジン工場は2008年4月に計画が発表され、同年秋のリーマン・ショックの影響で着工を延期していた。今回もトヨタ社内では根強い慎重論があったとされる。
 「最終的に『新工場を復興のシンボルにする』という社論でまとまった」。関係者の一人は振り返る。

<売上高は6000億円>
 セントラルも12月、大型プレス機を稼働させ、車体部品の製造に乗りだした。葛原徹社長は「単なる組立工場から車体メーカーに脱皮できる。(関自工岩手に続き)HV生産にも取り組みたい」と意気込む。
 統合会社の従業員は約7600人に膨らむ。生産能力は関自工の静岡県の工場を含め年間62万台。売上高は3社の単純合計(10年度実績)で約6000億円に達する。東北の上場企業で売上高トップの東北電力に次ぐ企業が出現する。
 小型車の企画から開発、生産まで担う「総合車両メーカー」(服部関自工社長)となる方向で、地元企業の参入余地はさらに広がるとみられている。
 未曽有の震災を経た「北の拠点」はことし、機能も規模も役割も大きくなって走りだす。

【カラー写真】東北で生産が始まったトヨタの小型HVのアクアと豊田社長、グループ3拠点(左上から時計回りに関自工岩手、セントラル、トヨタ東北)コラージュ
【カラー地図】「トヨタ自動車東日本」になる3拠点

用語解説
 トヨタ自動車  関東自動車工業  セントラル自動車  宮城  モーターショー  仙台市  ハイブリッド車  HV  プリウス  リーマン・ショック